はじめてのブログに

 
 台風後の肌寒さに感じる時の移ろい、
 地震津波から半年のこの今も、以前と変わらない“社会のうつし絵として計算されつくした複雑なもの”が、時代の空気として、または顔として私たちの深層心理にすりこまれ、明るい未来がうたわれている。ただとてつもなく大きな惨事を共時体験した今、様々なかたちで入ってくる情報の多くが時に虚しく、「だれもが精一杯、その人自身と誰かのために仕事しているのだ」とわかっても、胸の内に埋められれることのない微かな空白があることを否めない。

 生まれてくることのなかにある逃れられない悲しみ、それは今の私たちの境遇に初めて起こっているのではない。しかし我々が生きるこの世界は、深い静けさが常に人間の隣にあることを私たちが受け止めるために、時折思いに沈み、考える時間に佇むことから私たちを遠ざける。個々人の内面に重くのしかかるものをどうするか、その重みに耐えて、悲しみが勇気や慈愛へと昇華されるためにどれほどの時間を要するのだろう。この静けさを通り抜け、その先に再び明日と出会っていく、その明日が、七色の光が風と戯れる中、花を慈しむ、そんな明日であるように、今はただできることをしていよう。

この自分自身が、花を思う場であろうとし続けること、それが私にできる最上のこと。
花圓紗維(かえんさい)は花のスタジオです。
この先の私が生きる有限の時間のなかで、いのちの本当の夢を私自身が一時でも多くその中を生きているように。そして、その波動を静かに伝えていけるようでありたいと、思っています。
はじめてのブログに。
                                 いけばな作家 喜 苑